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-根来塗- 大藏達雄 漆芸展
9月27日(土)〜 10月2日(木)
根来日の丸盆 (表面中央部拡大)
大藏達雄さんの「根来」
俗に「根来」と称される朱漆塗器物の一群は、繁栄を極めた中世の紀州根来寺で
一山内の旺盛な需要を賄うために製作された朱漆器が主流をなすが、江戸時代に
入ってからも庶民の間では「根来もの」「根来出来」と称されて喧伝・珍重された。
それは中世根来一山内の組織立った工房が優れた木地師集団や塗師を擁し、彼らが
積極的に機能的で洗練された美しい形姿と微動だにしない頑健な素地づくりに励み、
さらには堅牢な塗り肌を持つ良質な漆器に仕上げられたからに他ならない。
「根来」の素晴らしさは機能的であるが故に馴染まれ使い込まれてきた朱漆器が、
用に耐えてきた中から醸し出す漆の塗り肌の絶妙な味わいにあると申して過言では
ないであろう。
明治の財界で活躍し日本の近代化に尽くした数寄者たちが、茶席の道具立てに競っ
て「根来」を愛用したのも、下塗りの黒漆と上塗りの朱漆がみごとに調和して醸し
出す塗り肌の雅味の故であるが、そのような用に耐えてきた「根来」の塗り肌の美
に、時空を超えて感銘し、自らの作品の中に再現しようと大奮闘しているのが、
大藏達雄さんである。
大藏さんの「根来」は中世根来の単なる模造ではない。経年の用に耐えて内部から
自然にほとばしり出てくる塗り肌の名状しがたい味わいを可能なかぎり表現しよう
とするいわば大藏流の試みなのである。
拙宅を訪れた「根来」の蒐集には目のない数寄者の方が、東大寺修二会所用の
錬行衆盤(日の丸盆)を範にして、大藏さんが最近制作した作品を御覧になり是非
所望したいという。何故ですかとその理由を尋ねると今出来の「根来」ではあるが
他の道具との取り合わせに用いても不自然ではないし、何より塗り肌に厭味がない
からであるという。私もまったく同感である。
「根来」写しの朱漆器の中には得てして意味不明の塗りや不快感をもよおすものもある
が、大藏さんの「根来」にはその塗り肌に筆舌に尽くし難い温もりと親しみがある。
河田 貞 (奈良国立博物館名誉館員・元文化庁文化保護審議会専門委員)
根来椀 二種
根来コロ花入 (素地:瓢箪)
根来天目椀
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