陶心陶語

金継ぎのこと

家庭画報の編集部から創刊750号記念号が届きました。

昭和33年、西暦で云えば1958年に創刊された家庭画報が8月号で創刊750号を迎えたということで、特別記念号として発刊されました。

「昭和33年に創刊された『家庭画報』は、8月号をもって創刊750号を迎えます。昭和、平成という2つの大きな時代をまたいで、私たちが見つめてきたもの--それはひと言でいえば、「日本の暮らし」です。令和の時代に入った今も、それは大きな変貌の途上にあります。この節目を機に、次世代へ継承したいモノ、コト、場所を、【昭和遺産】【平成遺産】として、選んでいきます。」
とのことで、今から14年前にわたくしどもが編集協力させていただいた金継ぎ特集が選ばれました。

元々は、2006年2月号の特集【もったいないは美しい-日本の伝統「継ぎ」の遊び心】。(画像参照:上が2020年の750号・下が2006年のもの)

歴史的には911で始まったような21世紀。
ゼロ年代の日本は、ジャパンアズナンバーワンから一挙にランク外に放り出され、多方面で方向性を見失ってしまった時代でした。
そのさなか、2001年に小学館「和樂」が創刊したことを端緒に、既存の女性誌が日本文化を見直すような(内向き志向といえばそうかもしれない)誌面構成をするようになる動きが出てきました。切磋琢磨を重ね、いろいろなアイデアを積み重ねていきました。
そして満を持して登場したのが、2006年の家庭画報「もったいないは美しい・・・」特集でした。

その頃、私が黒田陶苑トピックスというマニアの方々向けサイトを毎日更新していて、それを家庭画報編集部のかたがチェックしていてくださっていて、ある私のトピックス記事から発想してくださって、金継ぎ特集が出来上がったという経緯でした。
私としては「慈しみ」の想いからの金継ぎでしたが、誌面では「もったいない」となりました。

利休さま所持の茶碗や魯山人先生がコレクションしていた古い志野茶碗などをはじめ、鯉江良二先生の茶碗の金継ぎ作品を紹介する特集となった2006年の家庭画報は、すべてにおいて無感覚になっていた国内では正直、反響がありませんでした。

しかし、家庭画報には海外向けのKATEIGAHO INTERNATIONALという英語版があり、その誌面にその特集が掲載されることになり、それを見たヨーロッパやアメリカの人々が、それまで未知であった日本独自の文化に激しく反応し、大きな反響を呼んだのでした。

KINTSUGI

欧米でひそやかなそのブームが巻き起こり、完全なものよりも金継ぎされているものを探す人求める人も現れるようになり、連日のように私どもに海外から問い合わせがくるようになりました。
特に、誌面の端に掲載されている鯉江良二:金継ぎ白磁茶碗のビジュアルが衝撃的だったことで、その茶碗を要望する海外の人がとにかく多かった。

その後、海外での金継ぎムーブメンは続き、その海外需要から日本で金継ぎが注目され始め、金継ぎアートなるものが生まれ、さらには金継ぎアーティストまでが生まれてしまいました。

私が、水屋で茶碗を清めている際に誤って手を滑らして落として割ってしまった鯉江良二作:白磁茶碗。その見事な割れ方に、私が何かを感じて金継ぎを施したことで、結果的に起きてしまったムーブメントでした。

それが今回、新しい編集部の人たちの目に留まり、再び取り上げてくださったということで、新しい次元を迎えた現在に感謝です。

今でもその金継ぎされた茶碗は大切にしており、この茶碗は時が来れば海外の美術館に寄贈したいと思っております。

 

【金継ぎとは】
日本の古来から行われている、割れたり欠けたりした陶磁器を漆芸技法により修理すること。
天然由来の漆と木粉砥の粉を混ぜたもので接合し、純金粉を使用し蒔絵技法により金を施してゆく技法のことをいう。
現在は、特別な技術が無くても手軽に行え安価な、合成樹脂・合成接着剤・金ペイントを使用した疑似的な金継ぎが普及しています。
ただ、成分に劇物・毒物を含有する合成接着剤などを使用することもある疑似金継ぎは、花器や置き物などに対しては問題ありませんが、口を付けたり料理を盛り付けたりする食器に対しては健康被害が心配されることから、日常的に使用するには問題があります。
ちなみに私どもは、美的であることもあって、昔ながらの漆と金蒔絵を使用した金継ぎを推奨しております。

 

 

 

 

« 前の記事:備前徳利の愉しみ方 を読む

陶心陶語トップへ戻る