荒川豊藏 志野茶碗のこと
荒川豊藏 志野茶碗のこと
荒川豊藏(1894~1985) 志野茶碗 銘「山窓」 共箱
1964年作 w14.3×h9.3㎝
荒川豊藏先生は、志野茶碗を初期から最晩年までの長きに渡り手掛け、特に、昭和
四十年前後に志野の優品が生まれています。
柔和な緋色のこの作品は絵付けのない「無地志野」で、志野の釉の変化と焼きにこだわり抜いた作品で、荒川先生がお好きな不完全の美を象徴するようなものになっています。
釉を掛け残し、釉ヒビを入れ、指痕を付け、見込には釉の溶着を施すなど、釉掛けに関するありとあらゆる手法を取り入れています。
敢えてダメージを与えて美を演出したいとする荒川先生の熱気が伝わる一碗。
火間と称す釉の掛残しを九十五歳の茶人・松永耳庵が喜び、山の窓と命名しています。
※松永耳庵 Matsunaga Jian (1875~1971)
本名・松永安左衛門は、電力の鬼と呼ばれた実業家で、日本の電力事業の礎を築いた偉人。古美術品の収集家で、晩年は数寄者・茶人として余生を過ごした。
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