陶心陶語

古谷道生 信楽大壷のこと

 

古谷道生 信楽大壷のこと

 


古谷道生(1946~2000) 信楽壷 1990年 h40.6×w35.1㎝

 

中世から続く陶業地である滋賀県信楽に生まれた古谷道生先生は、信楽焼の次代を担う人物として注目された陶芸家でした。
信楽は、戦後、大規模な製陶場で作られる狸の置物、陶製傘立やガーデンファニチャーなど大型の陶器の製造が主力産業とした地域。

古谷道生が陶芸家としてスタートする1960年代の信楽は、茶道の隆盛にともない茶道具の制作を主とする名門陶家が台頭するなかで、一方、クラフトと呼ばれた京都発信の和食器とは異なる洋風な食器を制作するムーブメントも起こっていました。

古谷道生は当初、クラフトを指向し活動を始めましたが、しだいに中世の信楽焼に興味を持ち研究を始める。
そして、大型の登り窯が主流だった信楽で、1970年には小型の穴窯を自らで築造し、作品制作を始めました。

製品的に均一で安定して大量に焼造することができる登り窯に対し、穴窯は不安定で少量生産しか望めないが、古谷はその不安定なことを利点とした作品を作り続けることに作陶の道筋をつけていました。

1980年代以降、当時としては異色の古谷の信楽焼は、人気を博し、個展初日には行列ができるほどになりました。

1994年、古谷は、自身のそれまでの穴窯の築窯や焼成に関する試行錯誤の研究と実績、焼成理論を纏め上げた研究書『穴窯─築窯と焼成─』を刊行しました。
この一冊は、のちに陶芸家として活躍する人々の穴窯指南書・虎の巻・バイブルとなり、信楽のみならず全国の陶芸家に影響を与え、各地で穴窯が作られ、現在では、登り窯にとって代わり、穴窯が薪を使って焼成する窯の主流といってよいほどになりました。

古谷道生先生は、この本の刊行のあと体調を崩し、多くの人に惜しまれ、54歳で早逝されました。
偉人の夭折でありました。

今回ご紹介する作品は、古谷道生先生の名作・信楽大壺です。
穴窯の強い炎により、肩部に降りかかった灰が溶けビードロとなって胴部まで流れ落ち溶着し、壺は大きく歪んでいる。

この作品は、穴窯の中でのアクシデントを巧みに活かした古谷道生を代表する一品です。

 


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