陶心陶語

北大路魯山人 伊賀風花入のこと

 

 

 



北大路魯山人(1883~1959)
伊賀風花入
w17.6×h18.7㎝
初代黒田陶々庵箱
1930年代作品

 

 


 

北大路魯山人 伊賀風花入のこと

美の巨人とも食の天才とも云われて久しい北大路魯山人が、初めて自らの作品の展覧会を開催したのが1925(大正14)年、42歳の時であった。
その「魯山人習作第一回展観」は、書を中心に陶芸を交えた構成で、会場は東京赤坂の料亭・星岡茶寮を使用したものであった。
魯山人は、その年に、星岡茶寮を始めたばかりで、その展覧会は、当初は顧客に向けた余興のイベントのようなものでなかったかと想像するが、予想を超える評判を呼ぶことになり、それまで窯業地へ出向き制作していた魯山人であったが、鎌倉に自工房を創設するに至るのである。

星岡茶寮で使用する大量の食器と販売のための厳選された作品をその工房で制作を始めたのが、1926(昭和元)年。
登り窯を要したその工房「星岡窯」は、窯業の技術者を各地から招集し運営された。
作品を販売する展覧会は、その後、日本橋の三越呉服店へと会場を移し、作品は陶藝が中心となり、高い評価を得て回を重ねていったのである。

当初の陶芸作品は、中国の宋時代や高麗・李氏朝鮮時代の古陶磁を本歌とする倣作が主であったが、自工房を得てからは、志野や織部、乾山・仁清などの手法が加わり、独自性を込めた作品も増えていくのである。
なかでも、高温の窯の中で降りかかる灰を利用した手法で制作される信楽や伊賀は、それまでの魯山人の作風には無かった雰囲気を持つものであったが、魯山人は、その信楽や伊賀の持つ素朴かつ力強い表現を特徴的に活かした作品を限定的ではあるが残している。

上掲は、桃山時代の古伊賀の特徴を取り入れた花入である。
あえて鷹揚な轆轤さばきで形づくり、登り窯の中の火力の勢いの特に強い場所で焼成し、灰と熾きに晒して窯変を引き起こし、荒々しい陶芸の美を見せつけている。
魯山人の個性として云われる絵筆の妙や艶やかな美は、この作品には一切見られない。

この作品は、わき目を振らずに美に執着した魯山人の藝術の極点を示した一品である。

 


 


銀座 黒田陶苑アネックス は、
ギンザ・シックス [ GSIX ] の真裏の三原通りに面する銀緑館の2階にあります。
ご来店を心よりお待ちいたしております。




銀緑館前の三原通りには、パーキングメーターの駐車スペース(1時間300円)が多数設置されています。
また、ギンザ・シックス駐車場(30分300円)の他に近隣には多数の時間貸し駐車場があります。
ギンザ・シックス駐車場から当店までのアクセスは⇒こちらをご覧ください。

 


 

 
 

【銀座 黒田陶苑アネックス】
 
TEL.03-3571-3223
11:00-19:00 毎週月曜日・定休
 

 

 


銀座 黒田陶苑では、東京都のガイドラインに準じて新型コロナウイルスの感染拡大防止に務めております。


 

« 前の記事:黒田辰秋 黒柿... を読む

陶心陶語トップへ戻る