鹿児島壽藏 人形のこと
鹿児島壽藏 染色和紙金砂子装陶胎塑像・あすか乃風のこと
采女の 袖吹きかへす 明日香風
京を遠み いたづらに吹く [志貴皇子 万葉集・巻一]
福岡市に生まれた人間国宝・鹿児島壽藏(1898-1982)は、幼少の頃から、生家周辺で盛んに作られていた博多人形の制作現場を見ていた。
将来、自分も人形を作りたいと考え、高等小学校を出ると、すぐに人形制作の道に入った。しかし、博多人形を作るのではなく、博多人形の技法を用いたテラコッタで人形を作っていた。当初より個性的で芸術性のある作品を作ることに専心したといい、絵画を習得する必要を感じて上京し、洋画家・岡田三郎助らと関わる中でさらにその芸術性を高めてゆきました。
その後、和紙の原料であるミツマタ・楮などを原料にし、その繊維を固めて作る独自技法「紙塑」を完成させ、さらに紙塑に染色した和紙を張り付け装飾するなど多彩な技法で新作を作り続け、昭和36年には自らが作り出した「紙塑人形」の技法で国指定重要無形文化財(人間国宝)に認定されました。
この作品は、土で塑造し焼成したテラコッタに手染めした和紙を貼り、さらに彩色描画を施し金銀砂子で荘厳しています。
歌人でもあった壽藏が、万葉集の一節をイメージして制作した一品です。
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