陶心陶語

岡部嶺男  絵志野盃のこと

 

岡部嶺男は、窯業高校時代に鎌倉時代の古瀬戸の倣作・写しを手掛けたのを手始めに、志野や織部・黄瀬戸・瀬戸黒などの桃山時代のやきものに着目し陶芸家としての立ち位置を確立してゆきました。
1960年代後半に、青瓷の研究制作にシフトしてゆくなか、桃山陶の制作は中止しました。
この作品は、岡部の桃山陶制作の最末期のもので、嶺男志野の特徴がとても良く現れている一品です。
土は、純白といっていいほど白く、釉肌はふくよかで、釉色は薄橙色を呈し、色かたち共に他には追随できない魅力に溢れている。
嶺男の志野ぐい呑は、永きにわたり制作されていることで、目にする機会は少なくありませんが、久しぶりに優品に出会えて、このたびレコメンドの一品としてご紹介することにいたしました。
画家の横山操から譲られた中国古墨で書かれた箱書には、上出来と自ら認めたからか筆致に躍動感を感じられます。

 

« 前の記事:曜変天目の美 を読む

次の記事:桶谷 寧 曜変天... を読む »

陶心陶語トップへ戻る