北大路魯山人 鯖図のこと
料理の天才とも、書の達人とも、非凡の頭脳とも、多芸天才とも呼ばれた北大路魯山人は、陶芸は無論のこと、漆芸・書・絵画など多岐に渡り、その芸術的才能を花開かせ、こと絵画に関しては、戦前の一時期に集中的に画作し、日本画・南画・水墨・水彩など、油画を除いてさまざまな画風を残しました。
魯山人の絵画は、席画と呼ばれる色紙に即興的にスケッチ風にスラスラと描いたものを散見するくらいで、作品として描かれたものは、目に触れる機会はほとんど無いといって過言ではないでしょう。
画家・絵描きの絵画は、技法や筆法そして構図を重視し、さらに流派系統による画風を慮り画作するのに対し、魯山人は、画題に真に向き合いその対象に対し、愛情こめた優しい眼差しをもって、生々しいもの、優美なもの、美しいもの、雄大なるもの、それぞれの真正な美を描ききっているのが特徴といえます。
この作品は、鎌倉沖で獲れたばかりの鯖を庭から摘んできた隈笹の上に置き写生したものです。
活き活きとした鯖の姿と笹の鋭い葉先とをみごとに調和させ、画面からはみ出さんばかりに描ききっています。
« 前の記事:鯉江良二 白黒... を読む
次の記事:小山冨士夫 油... を読む »