本日の一品

Rosanjin Kitaoji

北大路魯山人 織部手桶形鉢

w22.4×h30.5cm 1940年頃 共箱   [Sold]

北大路魯山人 織部手桶形鉢

 

「私の陶芸は日本の様々な古典的古陶を師範に採ることが多い。その他、東洋に西洋に古典的存在を範としていることも事実である。しかし、私はあらゆる自然美を唯一の師範と仰ぎ美の探究を続けている。私の陶芸はすべてそこから始まる。」

北大路魯山人のお家芸の代表格として挙げられる陶製の手桶。

実用的な民具の木製手桶の形状を模して作られた陶製の手桶の歴史は古く、水指や花入として中国・清時代の古染付や江戸時代の京焼などの上質な茶道具に散見されるものである。

魯山人の手桶は、京都国立近代美術館が所蔵する名作「備前手おけ花入」を筆頭に多種の技法でもって陶製手桶を残している。備前のほかに、織部・伊賀・絵瀬戸・染付・白磁金彩・銀彩など作陶期間の初期から最晩年まで、作品数は限定的であったが手桶の数々を制作したのである。

轆轤引きで細長い壷状のものを作ったのち、両端の取っ手に繋がる部分を残して切り取り、残した部分に板状の粘土をあたかも木の板を差し込んだように付けあわせ、最後に縄に模した二本の装飾を施す。切り取られた断面に鋸で切ったかのような鋭いエッジを表し、肉厚は木の板を思い起こさせる計算されたみごとな出来栄えである。

魯山人の手桶の多くは、木製手桶を観察しながらも、上に向かって内側に湾曲する曲線で構成される17世紀の中国の古染付手桶の形状を取り入れていることが多く、本作品においてもその特徴がみてとれる。

上掲は全体に織部釉を掛けた手桶である。美しい緑色の織部釉は鮮烈で、高い技術で精巧に作られた器体に縦横無尽に流し掛けした釉薬の傍若無人ぶりは、魯山人ならではの迫力がある。時代や素材が違う中国と日本の美の様式を魯山人が一つに纏め創りあげた一品である。

 


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北大路魯山人 | Kitaoji Rosanjin

1883
京都市北区上賀茂北大路町に生まれる
1907
東京で書家として活動を始めるが挫折し放浪
1916
挫折し、韓国・中国・滋賀・福井・金沢など放浪し京都へ戻る
1919
東京で美術骨董店を開業
1921
骨董店の顧客を対象に、自らの料理を供する「美食倶楽部」を始める
1923
美食倶楽部で使用する食器の外注制作を始める
1925
料亭「星岡茶寮」を経営
1928
星岡茶寮の食器を製作するための製陶所「星岡窯」を鎌倉に設ける
その後、百貨店や茶寮などで作品即売会を催し評判を呼ぶ
1935
陶芸創作に専念するようになる
1936
星岡茶寮の経営から離れる
1937
北大路魯山人新作展(弊社主催)
1939
この頃「星岡窯」は50名余が従事し活況を呈する
1942
戦時下、石川に疎開し漆芸作品などを制作
1954
ロックフェラー財団の招聘によりニューヨークなどで個展を開催
アメリカ・ヨーロッパなどを歴訪
1955
重要無形文化財保持者(人間国宝)の認定を辞退
1956
東京・京都・名古屋などで盛んに個展を開催する
1959
逝去(享年77歳)


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