1950年代にジャクソン・ポロックが展開したアクションペインティングに刺激を受けた河井寛次郎が、自らの陶芸に巧みに取り入れた名作シリーズ「三色打薬」は、赤・綠・黒の三色の釉薬を通常のように掛けるのではなく、太筆を使って打ち付けることで作品に彩りを加えたそれまでに無い手法を用いて制作された河井寛次郎の芸術性を象徴する作品になっています。「三色打薬」で彩られた抽象形体の扁壷の名作は、後世に残るものとして美術館に収蔵されていますが、寛次郎は鉢や皿、灰皿や蓋物などの日常使いの器物にも三色打薬を展開し、茶碗や水指などの茶道具には衝撃的で大胆な彩色を用いて作品を世に問いました。
「三色打薬」の茶椀の中でも、限定的に少量制作された特別作品「彩碗」は、河井寛次郎が遺した名碗として知られています。
この作品は、河井寛次郎の「彩碗」です。
径が15センチを越えた大振りのもので、三色の発色が素晴らしく美的な茶碗で見ごたえがあります。
河井寛次郎 かわいかんじろう
1890 島根県安来市に生まれる
1914 東京高等工業学校窯業科卒業
京都市陶磁器試験場へ入所
1920 京都五条坂で制作活動を開始。工房名称を[鐘渓窯]とする
中国や韓国の古陶磁を参考にした作品を制作
1922 東京での個展が好評を博し、名声が高まる
1924 スリップウエアに感激し、作風が変化
1926 柳宗悦・濱田庄司らと民芸運動を起こす
簡素な形にオリジナル図案を施した作品を制作
1937 パリ万国博でグランプリを受賞
1949 創作的な作品の制作が始まる
1966 逝去(享年76歳)
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